通販事業と広告予算
通販事業を行う場合、基本、広告費が必ずかかります。そして、通販事業でも、主体となる販売媒体によって、広告予算のかかり方が異なってきます。
そもそも、通販事業とは、広告予算を投じ、リピート受注によって投じた広告費を回収していく先行投資型ビジネスです。初回の広告出稿では、数十万万円投じても、10件程度しか売れなかったというケースも多いです。
さて、まず、販売媒体は、以下のように区分されます。
紙媒体
紙媒体は、1出稿あたり10万円の媒体もあれば、1出稿あたり500万円を超えるような媒体も存在します。ちなみに、紙媒体に出向する場合、広告原稿が必要になり、別途広告原稿作成費(サイズ等によって変動)がかかります。
それぞれの媒体は、発行部数当たりの単価(出稿料/発行部数)が異なり、1出稿の価格が高いほど、単価が下がることがほとんどです。過去、単価の安い秋枠だけに出向するという広告プランも存在しました。
広告予算は、最低1000万円、好ましくは5000万円くらいが必要になります。
一方、紙媒体での展開は、2010年以降、なかなか費用対効果が合わなくなってきており、オススメできない状況が生じております。
なお、広告費用対効果は、CPO(Cost per Order、初回購入を得るのにかかる集客コスト)などの指標を用いて評価します。
電波媒体
次に、電波系媒体は、地方のCSのように1出稿あたり5000円の媒体もあれば、地上波のような1出稿あたり1000万円を超えるような媒体も存在します。
映像制作費が組み込まれた広告もあれば、別途放映映像を作成しないと出稿できない広告媒体も多く存在します。中堅~大手クラスの通販会社では、2000万円以上の放映枠(30秒、3分、9分、29分など時間様々)を買い取って、毎月出稿いたします。
広告予算も、紙媒体同様、最低1000万円、好ましくは5000万円くらいが必要になります。
一方、紙媒体より、映像の制作コストがかかります。30秒から29分までの各時間の映像を作る場合、制作費だけで500万円以上のコストが投じられるのが一般的です。
現在は、インフォマーシャルを放映しても受注はインターネットに誘導したり、インターネット媒体とクロスメディアで販売する手法が主流になっています。
インターネット媒体
現在、主流となっている通販媒体です。
初期投資額が少なく、広告費用対効果も、他の媒体より良いことが理由です。
そして、インターネットによる販売方法も、モール型通販と独自ドメイン型通販の2つに区分することができます。
モール型通販
Yahooや楽天、Amazonといったモール型通販では、基本、圧倒的な安さで売らない限り、売れる可能性は低いです。一定量以上を売ろうとすると、広告予算を投じる必要性が出てきます。そのため、ほとんどの会社は、かなりの広告予算を予算を投じています。
広告予算は、最低300万円、好ましくは1000万円と、紙媒体や電波媒体に比べて低めです。広告予算が少なければ、このモール型通販にチャレンジすることをオススメいたします。ただし、単品から始めても、複数商品を製造していく必要があります。
ただし、個人でも参入でるほど参入障壁が低く、安易に参入される会社さんも多いため、競争が非常に激しいです。必然的に価格競争も激しくなるため、特徴がない商品だと利益率が低くなり、薄利多売なビジネスになりやすいです。
なお、制作費をかけなくても販売できますが、それなりの販売手数料も生じるのも特徴です。
ちなみに、近年は、YouTuberによるセミナー誘導型ビジネスの受け皿として、モール系通販システムが利用されるケースも増えてきています。
独自ドメイン型通販
独自ドメイン型通販とは、広告出稿を行い、LP(ランディングページ)に誘導することで購入につなげていくインターネット通販です。
広告予算も、最低500万円、好ましくは2000万円以上が必要になります。
大成功している通販企業のほとんどが行っている販売方法です。なお、広告の受け皿としてモール型通販サイトも同時に併設している会社も多いです。
他の媒体同様、LP作成に別途製作費が生じます。
広告媒体には、リスティング広告(Google広告)、アフィリエイト広告、記事型広告など、様々なものが存在します。こういった広告媒体を複数組み合わせて、売上につなげていきます。
ちなみに、アフィリエイト広告などで、成果報酬制の媒体だと、販売価格の300~400%というものも存在します。そのため、定期購入システムで、6回以上縛るなど販売が横行しました。現在は、2~3回程度の緩い縛りが中心になっています。
広告予算と固定費
通販ビジネスの特徴として、フル外注で1名でも10億円以上の売上をたたき出すことが可能なことです。
一方、小さな広告予算では、人件費やショッピングカート費用などの固定費を上回って利益を出すには、かなりの時間を要します。
通販のビジネスの利益源は、リピート顧客であり、リピート顧客が蓄積されないと黒字化しにくいためです。
その傾向は、特に紙媒体>電波媒体>独自ドメイン型通販の順で強く、必要とされる広告予算が年々上がり続けている現状もございます。
今や、一人の新規顧客を得るのに1万円以上がかかることも稀ではない時代です。
相場の代理店マージンが10%程度だということもあり、中小の零細広告代理店でも、広告予算が500万円くらいないと相手にしてくれにくい現状もあります。
広告予算の相場も踏まえ、最適な通販ビジネスを選択することが重要です。
広告予算まとめ&商品原価率
広告予算は、販売媒体や販売方法によっても、適正な額が異なってきます。
市場が成熟しつつある今、その適正額も年々上がり続けています。
勝負する媒体も、初期の広告予算によって選択肢が限られることも多々あります。後述もしますが、銀行などから融資を受ける場合も、勝負する媒体によって、求める融資額も変わってくるのです。
また、別ページで紹介しているのですが、商品ライフサイクルによって適正原価率が異なってくるのと同様、商品ライフサイクルによっても適性広告予算とというものも変わってきます。
具体的には、商品ライフサイクルが成熟している商品ほど、広告予算は少なくて済む分、価格競争が激しい分、適正原価率も上がってきます。
ゲームの理論も働いています。
例えば、レスベラトロールやNMNなどといったブーム品の場合、成長期前期のライフサイクルの時点では、低原価率・低広告予算でも商品が売れますが、競合商品が増えてきてライフサイクルが成長期後期・成熟期へと移行すればするほど価格競争が激しくなり、だんだん適正原価率や必要広告予算額も上がってきます。
こういった背景から、ブーム品のビジネスは、スピード感が命なのです。
結論として、広告予算は、勝負する商品ライフサイクルやマーケティングプラン(販売媒体)と共に、原価率も絡めて適切に設定する必要があるのです。
広告代理店との付き合い方
通販事業は、広告代理店との付き合い方が非常に重要です。
インターネット通販は、リスティング広告やMeta広告など、誰でも容易に利用できますが、現在、広告代理店が運用代行として動くケースも少なくありません。
複数の広告代理店と使い、相性の良い代理店(基本、営業担当が良い代理店)に大きく予算配分していくことが望ましいです。
制作物は、広告代理店に任せることもできますが、商品のオリエンテーションだけでディレクションや作り込みまで一手に行ってくる反面、その分(人件費分)のコストが上がります。
全くの通販初心者で、全く制作物のことがわからない方は、その選択肢も間違えではありません。
原則、広告代理店は、やみくもに選ぶのではなく、様々な広告代理店の通販セミナーを受けてみて、選択していくことがオススメです。
一方、どこの通販セミナーも主催広告代理店が選ばれるように内容が組まれているため、全てを鵜吞みにするのではなく、しっかり内容を精査していく必要があります。まずは、自分自身が通販を勉強し続けていくことが大事です。
他力本願では、決して成功することはないでしょう。
なお、広告出稿を行うと、必ず費用対効果を導くための数値が算出されるはずです。広告出稿の度に、広告費用対効果を検証してもらえるような代理店が望ましいです。
通販事業では、この部分で如何にPDCAを回して広告費用対効果を高めてい行けるかが成功を左右いたします。そして、次の段階で、誘導すべき定期コースの戦略決めやクロスセル戦略へと進んでいくのです。
収支シミュレーション表の位置付け
最後に、通販企業が融資を受けるためには、収支シミュレーションを添付した事業計画書などが必要になります。そこは、広告代理店が代行して収支シミュレーション表を作成してくれる場合もあります。
一方、この収支シミュレーション表は、必ず黒字化するための理想論で作成されています。当然、商品力が加味されていないため、商品力が強く影響してくる広告費用対効果やリピート率の数値は、必ず異なってきます。実際、シミュレーション上の数値を下回る可能性の方が高いです。
したがって、収支シミュレーション表は、銀行からの融資を受けるためのものと割り切って、位置付けていただければと思います。
基本的に、広告代理店との付き合い方で、広告出稿における成果(高い広告費用対効果)をコミットさせようとする販売者さんは多く存在します。商品力を棚上げして広告代理店に成果だけを求めることは、ナンセンスです。そこまで成果を求めるのであれば、別途通販コンサルと契約したり、広告代理店に月額でコンサルティング料を支払うべきでしょう。
他力本願な考え方では、絶対に通販事業は成功しません!
通販会社は、弊社のようなOEM会社や広告代理店の力を借りながらも、主体となって利益を生み出すモデルを創造していかなければなりません。むしろ、勝ち組の通販会社では、データ解析手法や顧客管理情報などを広告代理店にも共有せず、ノウハウが漏れないよう徹底します。
広告代理店との付き合い方は、適度な距離感が重要なのです。