フェムテックと鉄
鉄は、フェムテック・フェムケアニーズでも多く利用されています。
月経による鉄損失による貧血は、女性の大きな悩みの1つであり、フェムテック・フェムケア商品では、必ず網羅すべき対策となっています。
ANCHORパートナー社の調査結果では、最も改善したい悩みのトップは月経トラブル(腹痛・貧血など)となっており、フェムテック・フェムケアでは、鉄が重要であることがわかります。
フェムテックニーズの代表例であるPMS対策も、鉄欠乏とは無関係ではありません。
基本、鉄欠乏症とPMSは、判別しにくいとされています。そして、鉄欠乏は、PMS症状の増悪因子になっているという報告もあります。
慢性的な鉄欠乏症とPMSの両方をが生じている状況では、鉄が排出される月経時にPMSだけでなく鉄欠乏の症状も同時に引き起こされます。鉄を補って、鉄不足の症状だけでも緩和することが望まれます。
鉄欠乏とPMS/メンタルヘルス
鉄欠乏がPMSの要因となっている報告もなされている。鉄も、神経伝達物質の合成とホルモンの調整に不可欠な栄養素だからです。例えば、鉄は、中枢神経系における多くの神経伝達物質の合成酵素に必要です。そのため、鉄が欠乏すると、メンタルヘルスにも影響が生じやすいのです。
弘前大学・京都大学・大正製薬の共同研究では、健康ビッグデータから女性のメンタル不調に鉄不足が関係していることを報告しており、その内容は、2023年度日本農芸化学会で口頭発表されています。
実際、月経周期がほぼ安定している健常な女性に対して、鉄を摂取させ、月経前不快気分状態が緩和されたケースも報告されています。また、潜在性鉄欠乏に対する鉄剤加療により症状が軽快したケースも報告されています。
潜在性鉄欠乏、すなわち、隠れ貧血も含め鉄欠乏は、女性のPMS症状を増悪させる可能性があり、PMS対策として鉄は重要な位置付けであることがわかります。
近年、奥平智之医師(栄養専門精神科医)のヒット書籍『食べてうつぬけ 鉄欠乏女子救出ガイド』では、鉄欠乏女子テケジョと栄養型うつについても述べられています。その中では、鉄欠乏を解決する食生活を始め、わかりやすく鉄欠乏の見つけ方や鉄欠乏とメンタルヘルスの関係なども紹介されています。
平成29年国民健康・栄養調査によると、成人女性は、平均して4.1mgの鉄が推奨量より不足していることが示さています。書籍のヒットは、鉄欠乏によってメンタルヘルスに悩んでいる女性が多いことを示しているのでしょう。
フェムテック・フェムケアは、鉄が重要であることは明白です。一方、栄養鉄にもいろいろな種類の素材が存在します。
ピロリン酸鉄やクエン酸鉄、ヘム鉄(主に豚血液由来)、そして、フェリチン鉄(主に豆由来)。
フェムテック・フェムケア市場では、ケミカルな素材より、体に優しいボタニカルな素材の方が好まれます。また、鉄特有の副作用(胸焼け等)が少ない鉄が選ばれます。
そのため、フェムテック・フェムケア商品では、豆由来の優しい鉄:まめ鉄が選ばれるのです。
引用文献:
約9割の女性がフェムケア・フェムテックで不調改善が見込めると回答!最も改善したい症状とは? ANCHORパートナー株式会社プレスリリース
Effect Of Anemia On Premenstrual Syndrome In Adolescent Girls. International journal of basic and applied physiology.2(1);2013;104-108
栄養精神医学からみた女性のメンタルヘルス 女性心身医学 2023;28(2):192-198
II.鉄欠乏 2.小児と思春期の鉄欠乏性貧血 日本内科学会雑誌/cite> 2010;99(6):31-36
弘前大学・京都大学との共同研究で、健康ビッグデータから『女性のメンタル不調』に『鉄分不足』が関係していることを確認 大正製薬ニュースリリース
鉄分摂取が月経前の気分状態に及ぼす影響 日本健康心理学会大会発表論文集/cite> 2017;30:67
潜在性鉄欠乏への加療が奏功した思春期月経前症候群の 1 例 女性心身医学/cite> 2024;28(3):357-361