レスベラトロールの摂取目安量に関する見解
近年、レスベラトロールの摂取量目安は、女性ホルモン様作用も加味され、トランス体レスベラトロールとして30~150mg/日が提言されてきました。その量的な根拠は、Timmersら(2011年)の報告で健康な肥満男性に対して150mg/日で30日間摂取させてカロリー制限様効果(AMPKを活性化、SIRT1とPGC-1αタンパク質のレベルが増加)が得られた
点や、Wongら(2011年)の報告で30、90、270mg/日の摂取量で肥満ヒト被験者の(摂取0.8~1.5時間後の)血流依存性血管拡張反応で改善効果が認められてた
点などが用いられていました。
一方、2012年、レスベラトロールの第一人者シンクレア教授らによって、
低用量摂取では直接的なサーチュイン活性の増強が起こっても、高用量摂取では直接的にサーチュイン活性の増強が行らない(ただし、AMPKを活性化して間接的にサーチュインを増強する)
という報告が行われ、摂取量の概念も大きく変化しました。低用量(弊社では30mg以下と定義)摂取での重要性も増したのです。
実際、低用量摂取条件のヒト臨床試験では、有効性が示されています。一方、高用量摂取におけるネガティブデータも出始めています。1つは、第12回日本抗加齢学会総会(2012年)の新村らの発表です。実験では、ラットによる実験だが低用量と高用量に分けて3ヶ月間投与しました。低用量だと心虚血再還流障害を軽減させたがミトコンドリアの機能は変えなかった。高用量ではミトコンドリアのサーチュイン(Sirt1とSirt3)の増加を認めたが、心虚血再還流障害は悪化した。という結果が得られました。
また、実際にヒトでの試験結果として、以下のような報告もなされています。
Poulsenら(2013年) Diabetes. 2013;62(4):1186-95.
肥満者に対して1500mg/日で4週間摂取させたが、インスリン感受性がわずかに悪化し、血圧や代謝マーカーなどは変化しなかった。
Timmersら(2016年) Diabetes Care. 2016;39(12):2211-2217.
Ⅱ型糖尿病患者に対して150mg/日で30日間摂取させたが、インスリン感受性への影響は認められなかった。一方、収縮期血圧の低下やミトコンドリアの機能の活発化などは、認められた。
現在、低用量でのヒト臨床試験結果も増えております。弊社では、30mg以下を定量量と定義しておりますが、現在、どの量からが低用量であり、どこからが高用量であるかの明確な定義がなく、今後、その議論が進んでいくものと考えております。
低用量のヒト臨床試験報告
Brasnyóら(2011年) Br J Nutr. 2011;106(3):383-9.
2型糖尿の患者に対して10mg(5mg×2回。ハーブ由来)/日で摂取させ、インスリン抵抗値の指標であるHOMA-IR値が有意に低下し、インスリン感受性の改善が認められた。また、酸化ストレスの低減効果も認められた。レスベラトロールの摂取によって、インスリン分泌に関わるシグナル伝達系を改善したものと考えられる。
Magyarら(2012年) Clin Hemorheol Microcirc. 2012;50(3):179-87.
安定冠動脈疾患発症の患者に対して10mg/日で3ヶ月間摂取させ、血管の柔軟性(FMD)や左室拡張機能の改善やLDLコレステロール値の低下などが認められています。
Buonocoreら(2012年) Clin Cosmet Investig Dermatol. 2012;5:159-65.
皮膚老化のある健常な男女に対して8mg/日(ブドウ抽出物として133mg)+ザクロ抽出物(両抽出物由来のプロシアニジン:18.38mg、エラグ酸・プリカラジン:8.75mg)で60日間摂取させ、血漿および皮膚の抗酸化活性が上昇し、皮膚保湿性・柔軟性や皮膚の粗さ、皺の深さ、シミ(褐色スポット)など皮膚老化に改善が認められた。
Tomé-Carneiroら(2013年) Drugs Ther. 2013;27(1):37-48.
プラセボ、ブドウ抽出物(350mg/粒)、ブドウ抽出物+RES(350mg/粒+レスベラトロール8mg/粒)の3つの内容物グループで、慢性冠動脈疾患の患者に対して1年間に渡って試験が実施。前半の6ヶ月では1日1粒摂取、後半の6ヶ月は1日2粒摂取の条件で実施されています。ブドウ抽出物グループでは、前半6ヶ月と後半6ヶ月の両方で、冠動脈疾患の症状改善が認められました。各改善効果を比較した場合、ブドウ抽出物グループよりブドウ抽出物+RES、6ヶ月より12か月時点で高い改善効果が示されました。
浅野ら(2015年) 医学と薬学 2015; 72(7):1261-1273.
健康な成人女性に対して12mg(リンゴンベリーエキス40mg)/日で12週間摂取させ、摂取前と比較して肌弾性の上昇によるハリ改善効果が示された。
栗山ら(2016年) 新薬と臨牀 2017; 66: 783 -801 ※弊社原料
健康な成人男女に対して20mg(赤ワインエキス末400mg※、OPC:160mg含有)/日で12週間摂取させ、血管の柔軟性の指標であるFMD値が正常値まで回復した。12時間以上のウォッシュタイムを設けた試験であり、持続的な改善効果が示された。
これらの報告より、弊社原料を用いてエビデンスベースの商品設計を行われる場合、目的によって(弊社原料として)以下の摂取目安量で設定することが望ましいと考えられます。
一般的な健康維持:100~600mg/日(レスベラトロールとして5~30mg/日)
美容/アンチエイジング目的:160~400mg/日(レスベラトロールとして8~20mg/日)
血管の柔軟性による健康維持:200~600mg/日(レスベラトロールとして10~30mg/日)
また、弊社原料に40%以上含まれるOPC(オリゴメリックプロアントシアニジン)については、一般的な摂取目安量が50~150mg/日とされており、いくつかの報告では300mg/日とされています。この摂取目安量も加味して、摂取量設定を行っていただければ幸いです。
摂取上限量について
本原料の推奨摂取上限量は、レスベラトロールではなくポリフェノールの長期摂取量の観点から、1000mg/日と設定いたしております。カナダにおいて、ポリフェノールであるカテキン600mg/日の6ヶ月摂取が肝機能障害の健康被害の原因の1つとして疑われており、まだ因果関係は明白ではありませんが、高量のカテキン摂取に対して注意喚起なされております。カテキンはトクホ商品が存在するくらい安全性が確認されている成分ですが、どんなに体に良い成分も、過剰摂取は害を成します。この上限量も、弊社原料のポリフェノールの含有率と過去事例から、安全面を考慮して設定いたしました。ご理解の程、何卒よろしくお願い申し上げます。