かくれ貧血は血清フェリチンで判断
血清フェリチンとは
フェリチンは、貯蔵鉄と呼ばれ、体が貯蔵している形の鉄を指します。アポフェリチンというタンパク質に包まれた生体ナノ鉄であり、フェリチン鉄とも呼ばれる。
▶ フェリチン鉄とは
通常、摂取して余った鉄は、ラジカルを発生しない安全な形であるフェリチンに変えられ、主に脾臓や肝臓に貯蔵される。
血清フェリチンとは、血中のフェリチン量を指し、体に貯蔵されているフェリチン鉄の指標として、用いられている。ヘモグロビン値が正常でも、血清フェリチンが低ければ、かくれ貧血として、様々な不定愁訴がもたらされる可能性がある。
フェリチン鉄に関しては、現在、動物由来だけでなく、豆由来のフェリチン鉄も発見され、新たな栄養鉄として注目を浴びている。
かくれ貧血とは
近年、かくれ貧血という言葉を健康番組や健康雑誌で目にするようになりました。かくれ貧血とは、潜在性鉄欠乏を指し、今までよく見落とされていた貧血の1つです。
かくれ貧血は、健康診断で検査されるヘモグロビン値やヘマトクリット値だけで判断しにくい鉄欠乏の前段階です。
1992年の内田らの調査報告(日本人女性3,015名)では、鉄欠乏性貧血8.5%、潜在性鉄欠乏8.0%、貯蔵鉄欠乏(前潜在性鉄欠乏)33.4%、正常43.6%、その他6.5%となっており、調査に参加した半数の女性が鉄欠乏もしくは潜在的鉄欠乏である
ことが示されています。
本調査研究では、貧血の基準はトランスフェリン飽和率16%以上、血清フェリチン12 ng/ml以上の健常人の平均値から求めたヘモグロビン値から判定しています。
臨床の現場では、血清フェリチンだけを検査し、かくれ貧血(潜在性鉄欠乏・前潜在性鉄欠乏)を判定することが多いようです。
また、女性の場合、血中の鉄は、月経による鉄損失量は、10~17 歳で3.06 mg/日、18 歳以上で3.64 mg/日と推定されており、熊谷らの報告では、月経中に血清フェリチン値が30%以上低下することが報告されている。したがって、採血を行うタイミングでも判定結果が変化し、月経とのタイミングによっても鉄欠乏の症状の出方が変わると予測されるます。
そして、2022年7月8月のNHKの番組では、日本人の食事摂取基準や国民健康・栄養調査から、日本人の成人女性が平均3~4mgの鉄が不足しているデータを示し、フェリチン(貯蔵鉄)を紹介しながらかくれ貧血の可能性なども紹介しました。
(なお、本サイト内ページ:鉄摂取目安量と女性向け鉄サプリメント設計には、全く同じ内容・同じ引用文献で紹介されております。)
それにより、意図的に1日あたり4mg以上の鉄を摂取したり、血清フェリチンの値を計測する人が増えました。それが、フェリチン鉄ブームの火付け役となりました。
現在、豆由来フェリチンが大ヒットしておりますが、それは、検索エンジンでフェリチンのキーワードで数多く検索されるようになり、そのトラッキングの影響でフェリチン鉄商品の露出が増えたことに起因します。これがヒットの理由だったりするのです。
引用文献
内田ら:日本人女性における鉄欠乏の頻度と成因にかんする研究 1981年~1991年の福島・香川両県での成績 臨床血液 1992;33(11):1661-5.
熊谷ら:大学生における貧血の頻度と成因について 熊本大学医療技術短期大学部紀要 1993; 3 55-60.
日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会 報告書:微量ミネラル 鉄(Fe)
平成29年国民健康・栄養調査
日本体育協会スポーツ医・科学専門員会のアスリートの栄養・食事ガイド
女性に多い二次性貧血のタイプ
成人女性の中には、鉄をしっかり摂取していても、ヘモグロビン値やフェリチン値が低い方々もいらっしゃいます。
こういった鉄の摂取量不足以外の要因による貧血を二次性貧血と呼びます。
この二次性貧血には、様々な要因が存在し、がん(悪性新生物)による鉄の商品も要因の1つです。
そして、女性に多いタイプの二次性貧血は、腸内環境が悪く、腸に炎症があり吸収できないタイプの二次性貧血です。そういった女性は、鉄剤を投与しても効果があまり期待できないため、鉄剤の注射で治療されています。
鉄を摂取していても、貧血症状が回復しない女性は、二次性貧血を疑ってみても良いと思われます。
引用文献:
外山 圭助:5.二次性貧血 日本内科学会雑誌 1990;79(5): 608-613.