希少コラーゲン:Ⅺ型コラーゲン
動物の軟骨は、主にⅡ型コラーゲンで構成され、極僅かにⅪ型コラーゲンも含まれていることが数多く報告されていました。例えば、軟骨魚類であるガンギエイのコラーゲン組成も調べられており、主にⅡ型コラーゲンであることがわかっていました。そして、軟骨特有のコラーゲンであるⅪコラーゲンは、どの由来でも含有量が非常に少なく、希少コラーゲン(minor collagen)として取り扱われてきました。
一方、最近の研究報告では、シロサケの鼻軟骨に関しては、他の動物・魚類とコラーゲン組成が異なることが福井県立大学の水田教授らのチームによって報告されております。そして、シロサケ鼻軟骨のコラーゲンは、コラーゲン全体の約2割もⅪ型コラーゲンが占めていたことが発見されました。従来、鮭鼻軟骨のコラーゲンも、ポリアクリルアミド電気泳動の試験より主にⅡ型コラーゲンであると考えられていましたが、この従来の電気泳動法の条件では、分離の前処理が不十分でⅪ型コラーゲンのバンドがⅡ型コラーゲンのバンドに隠れていたのです。
シロサケは、他の魚類より鼻軟骨が格段に発達しており、プロテオグリカンも多く含まれることから、近年、非変性コラーゲンだけでなく、プロテオグリカンの粗原料としても脚光を浴びていました。そして、このプロテオグリカンは、動物間や魚種間で分子量が異なることが知られており、この度、コラーゲンは、鮭鼻軟骨だけⅪ型コラーゲンが特異的に多い組成をしていることがわかりました。
この希少コラーゲンであるサケ鼻軟骨由来のⅪ型コラーゲンは、希少なコラーゲンであったことから、その機能性評価は他のコラーゲンほど十分に行われておりません。また、このⅪ型コラーゲンはアテロ化せずに抽出することが非常に難しく、非変性のサケ鼻軟骨由来のⅪ型コラーゲンだけを分離して機能性評価を行うことが非常に困難です。一方、順天堂大学の研究チームでは、天然比率(Ⅱ型コラーゲン:Ⅺ型コラーゲン=約8:2)のサケ鼻軟骨由来非変性コラーゲンの膝関節痛に対する有効性が示されています。その報告では、摂取によりヒト軟骨の合成分解バランスを整えることで、歩行時の違和感などを改善することがわかっています。