エクソソーム(エキソソーム)

2021年2022年は、ニコチンアミド・モノヌクレオチドに沸いた年であり、2022年後半はフェリチン鉄がブレイクしました。
弊社は、常に流行も追い続け、的確に流行を先取ることで、顧客と共に成長してきました。

そして、2023年の注目素材は、

エクソソーム

です。エクソソーム(エキソソームとも呼ばれる)は、再生医療の分野で注目され始めたワードです。
近年、一部の再生医療クリニックでは、自己の幹細胞を培養して得られたエクソソームを活用したアンチエイジング治療なども始まっています。

そのため、エクソソームは、クリニックルートや中国ルートで、ニーズが高まりつつある素材になってきているのです。

エクソソームとは?

エクソソームとは、細胞から分泌される直径50-150 nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の顆粒状の物質です。その内部には、mRNA、 microRNA、 タンパク質等の多くの情報伝達物質が内包されています。

簡単に表現すると「細胞からのメッセージ物質」です。

そのエクソソームは、メッセージ物質であり、信号のような命令物質です。
我々の体内において、多くの細胞が様々な種類のエクソソームの指令によって、様々な働きを行っています。

良く知られているエクソソームの役割は、細胞の再生とアポトーシス(死)への関与です。また、エクソソームは、免疫や老化にも深く関わっています。そのため、エクソソームは、アンチエイジング医学でも重要視されているのです。
最新の研究では、米国ピッツバーグ大学のSahu博士らが、血清中のcEVというエクソソームがその若齢化、あるいは老化防止の本体であることを発見しています。また、藤田医科大学の研究チームが真皮幹細胞が分泌するエクソソームの変化が肌のコラーゲン産生に関わることを発見しています。その他、ガン、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病など様々な疾患に対しても研究が進められています。エクソソームは、様々な可能性を秘めているのです。

2013年にノーベル生理学・医学賞を受賞しているランディ・シェクマン博士も、現在は、低分子RNAがどのようにしてエクソソームに分泌されるか、また、小胞が標的細胞でどう機能するかなど、細胞外小胞の生合成のメカニズムを研究されています。

エクソソームの実用化研究も進みつつあり、ヒト母乳中にもエクソソームが存在し、CD63 や CD81 といったエクソソームマーカーによって存在が確認されています。そして、ヒト母乳中のエクソソームは、免疫に関係する多くのmiRNAを内包することもわかっております。将来、乳からエクソソームを選択的に取り出し、利用される可能性も出てきています。

細胞外小胞とエクソソーム

細胞外小胞(extracellular vesicle, EV)とは,あらゆる細胞が細胞外に分泌する膜小胞のことを指します。細胞外小胞は、1980年代に赤血球の分泌する膜小胞として発見され、当初は“exosome(エクソソーム)”と呼ばれていましたが、現在では細胞から分泌される膜小胞を指す「細胞外小胞」という総称が推奨されています。

引用文献


Sahu A, et al. Regulation of aged skeletal muscle regeneration by circulating extracellular vesicles. Nature Aging. 2021; 1: 1148-1161.
Ayumi Sanada, et al.Enhanced Type I Collagen Synthesis in Fibroblasts by Dermal Stem/Progenitor Cell-Derived Exosomes. Biological and Pharmaceutical 2022;45(7) 872-880.
研究支援エナゴ 講演者 Dr. Randy Schekman
細野 崇, 増澤(尾﨑) 依, 関 泰一郎:miRNAを介した新しい食品機能の発現機構 生物と化学 2016;54(12):909-914
Charlotte A, et al. Exosomes with Immune Modulatory Features Are Present in Human Breast Milk. J Immunol 2007;179 (3) 1969-1978.
N Kosaka, et al. microRNA as a new immune-regulatory agent in breast milk. Silence. 2010 Mar 1;1(1):7
Johnstone, R. M. et al. Vesicle formation during reticulocyte maturation. Association of plasma membrane activities with released vesicles (exosomes) J. Biol. Chem. 1987;262(19):9412-20.

どんなエクソソームが良いのか?

エクソソームは、がん(悪性新生物)も進行させてしまう可能性もあり、どのようなエクソソームを用いた方がより安全で高い有効性を得られるか?の実用化研究も行われています。

そこで注目されているのは、母乳、サイタイや胎盤(プラセンタ)など赤ちゃん周辺のエクソソームです。※サイタイ(臍帯)とは「へその緒」。赤ちゃんは、ものすごいスピードで細胞増殖を行われているのにも関わらず、正しく遺伝子転写が行われ、がん細胞が生じにくい点などが着目されています。
例えば、医療分野でも活用されているサイタイ由来のエクソソームが良いとされ、研究が進められています。

実際、我々の研究でも、サイタイ血幹細胞培養液には、実際、エクソソームが含まれていることが確認されています。おそらく、プラセンタ(胎盤)や羊膜など、他細胞由来の幹細胞培養液でも、エクソソームが確認されるでしょう。

また、エクソソームは、タンパク質や核酸で構成されているため、熱変性などを加味すると、極力熱がかかっていないエクソソーム素材が好ましいです。
おそらく、粒子数では同じでも、加熱の有無によって、活性などに差が生じる可能性がございます。
瞬間でも高温がかかるスプレイドライ粉末より、液体やフリーズドライ粉末が好ましいと考えられます。

なお、植物と動物におけるmicroRNA(エックソソームに内包されている情報伝達物質)の違いなども報告されており、必ずしも植物のエクソソームが良いとは言い切れません。弊社では、植物より動物、動物の中でも哺乳類が良いのでは?と考えております。

引用文献


岩川 弘宙, 泊 幸秀:植物と動物におけるmicroRNAによる翻訳制御機構 化学と生物 2015;53(8): 510-514.

エクソソームを高含有した食品素材

現在、幹細胞培養液など、化粧品素材では、エクソソームが含まれる原料が流通しています。

一方、ヒト由来のエクソソームを含む、幹細胞培養液素材は、健康食品やサプリメントに利用することはできません。
ヒト由来の素材は、薬機法に抵触するためです。

すでに、弊社ならびに弊社顧問先にて、エクソソームを高含有している食品素材は複数発見されております。赤ちゃん周辺の素材です。現在、研究開発を進め、どのような条件で製造された原料でエクソソーム量が多いか?どの素材で機能性が高いか?などの検証が行われ始めています。

現時点において、一部、弊社独自のデータも取得されており、弊社では、OEM限定で供給を開始する予定で進められております。また、一部の原料に関しては、今後、弊社顧問先から原料製品の上市も予定されております。

エクソソームと相性の良い素材

サーチュイン系素材:ニコチンアミドモノヌクレオチドやレスベラトロール
オートファジー系素材:ジオスゲニン

美容素材:非変性プロテオグリカン、セラミド
最新素材:非変性(生の形)の希少コラーゲン:Ⅺ型コラーゲン


適した加工方法(熱を極力かけない製剤化)も含め、詳しくは、営業担当にご相談くださいませ。

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市場動向

エクソソームの市場動向として、最も多くの要望が届くのは「ヒト幹細胞培養液」のエクソソーム原料です。

一方、先述の通り、ヒト由来のエクソソーム原料は、食品で用いることができません。
しかし、市場では、研究用途などで、ヒト由来とは書かれてませんが非合法なヒト臍帯由来幹細胞培養液(FD末)の商品が流通しております。

しかも、自分の幹細胞を培養する自家培養ではなく、他人の幹細胞を培養されたものであり、かつ、経口摂取や塗布に限らず、エクソソーム点滴療法と称して未承認医薬品の注射薬として用いられている事例もあるようです。

エクソソーム市場は、こういったグレーな商材が出回り、ヒト以外の哺乳類由来の原料を用いた商品の売上が低迷している状況も起こっております。

【追記231030】
幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報が流れており、一般社団法人再生医療抗加齢学会からのコメントが出されています。

事件の詳細は不明ですが、弊社では、非合法なヒト臍帯由来幹細胞培養液(FD末)の商品(用途:注射、サプリ)の存在を認識しつつ、実際に同様な用途での問い合わせがあった場合、非合法性を説明しつつ、案件を全てお断りさせていただいておりました。

基本的に弊社では、再生医療でも自分の細胞の培養細胞(ホモ)であれば問題ないですが、他人の細胞の培養細胞(ヘテロ)の注射利用は、非合法であると認識しております。化粧品用途でも、暗に認められた形になっていますが、厚生労働省などから流通を認めるパブリックコメントがある訳ではありません。
弊社では、今後も「サプリメント用途は動物由来のみ(非培養の抽出物原料)」「ヒト由来幹細胞は、化粧品用途のみで注射はNG」という姿勢を徹底していきたいと考えております。


記事筆者

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO
SloIron Inc. 取締役(Stockholder)、順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。…もっと詳しく